はじめに:高まるオフィス要不要論に答えはない
当社は自由な働き方を推進してきた。だがコロナの影響で突然テレワークが広まり、会社も従業員もこの大きな変化に順応していかなければならない。
世間ではオフィスの在り方に注目が集まっている。ある意識調査では自宅勤務は約60%が「心地良い」「通勤が楽になった」「仕事も今のところ問題ない」という結果が出ている。だから「オフィスは不要になる」という意見があるようだ。
だがオフィスの在り方はシリコンバレーでも意見が割れている。これは経営者の考え方次第だし、ビジネスの仕組みにもよる。多様な価値観の中で正解のない答えを出して進んでいる最中である。
この記事では、今後のオフィスの在り方やコミニュケーションの重要性について、経営者の視点で語っていく。
経営者を悩ませるテレワークの負の側面
オフィスとは、以前は普通にあるものであり、そこに通勤することに何も考えなくても良かった。だが今回のコロナ禍で一時的にだが出社しなくてよくなった。
コロナ禍収束後もテレワークを行いたいかどうか、リモートでもコミュニケーションに問題はないのか、オフィスの必要性を考察したい。
テレワークに否定的な声も少なくない
2020年5月および7月に実施された公益財団法人・日本生産性本部 「第2回 働く人の意識調査」では、7月時点でも24.3%がテレワークに否定的(下図)である。
ちなみに当社の社員について「仕事をする環境について」アンケート(自社アンケート①)をとったところ、58.8%が「テレワークで困っている」と回答した。自宅ではWIFI通信環境、机や照明など、物理的な困難さが目立った。
コミュニケーションにも不安を感じるテレワーク
リモートでもコミュニケーションは適切に維持されているだろうか。
同意識調査では、「適切に評価されるか不安」が27.9%に続き、「孤独感や疎外感」で15.8%、「上司・先輩からの指導を受けられない」は14.9%となり(下図)、ほとんどの人がコミュニケーションに何らかの不安を感じていた。
当社の社員アンケートでも半数以上がコミュニケーションに困っていると回答した。
具体的には、テキストでのコミュニケーションでは細かなニュアンスを伝えにくい、気軽な相談をしにくくなった、簡単な声掛けや雑談ができなくなったとあり、意識調査の結果と同様であった。
技術の進歩でリモートでも仕事はできる、勉強もできる。Googleマップにより旅先を知ることもできる。だがこれまでのように仕事の中で同僚、お客様との質の深い人間関係をリモートで本当に実現できるだろうか?
会社と個人のWin-Win実現にはコミニュケーションが不可欠
当社の理念は、「人間としての原則を重視し、自分自身、家族、同僚、顧客、世界が、Win-Winであることを実現していくこと」である。
会社と社員個人が目指しているのは、以下のWin-Win 関係である。
- 個人:会社に貢献する
- 会社:社員のありたいキャリアを実現する場を提供する
幸せな人生を送るために必要なことは「質の高い関係性」
ところで、「個人のWin」とは金銭や地位や名誉といった表面的な成功ではなく、真の意味で幸せな人生を送ることである。
この概念は「7つの習慣(スティーブン・R・コヴィー著)」を参考にしている。7つの習慣では冒頭で
と述べている。まったくその通りだと思う。
また、70年以上かけて700人以上の生涯と彼らの人生観をまとめたハーバード大学の「幸せで健康な人生に関する最も長い調査」でも「素晴らしい人間関係は私たちに幸せと健康を届けてくれる」と結論づけている。
つまりこの2つが言っているのは「人生を幸せに終えるためには ”質の高い関係性” が重要」ということである。
「質の高い関係性」は「質の高い結果」の基盤にもなる
また、私は会社が成果や結果を出すことについて、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する「組織の成功循環モデル」を支持している。このモデルの要旨は、質の高い結果は、質の高い関係が前提にある、というものである。
間違いなく仕事は家族の時間と同様に人生の大きな時間を占めており、オフィスでの人間関係はその人によるが大きなつながりを産むことができる場である。私は仕事を通じて質の高い人間関係を築くことがとても大切であると考えている。
「幸せを実現させる場」としてのオフィス 今後の在り方
今、私の事業は人を増やし、教育、育成をして事業をスケールする段階である。
ナスダックを目指し、その先にグローバル化をする。その中でひとつ実現したいのは多様な人の交わりだ。
違う人、文化、言葉で学ぶことがあり、それがボーダーを超えて自分を成長させる。非言語的な五感も必要である。教育、オンボーディング、帰属意識でも必要である。
そのためにも、今後オフィスはただ当たり前にあるところから、よりコミュニケーションを取る目的を明確にする必要がある。オフィスに毎日来る必要はない。それが毎日出社する必要があるのか、自宅で仕事をした方がよい日があるのか、今後そのようにバランスを取る企業は増えていくであろうし、企業の成長段階によって判断も変わってくるだろう。
私はより幸せで良質な関係を同僚と築きたい。だから対面コミュニケーションを重視し、その場としてオフィスを活用するつもりだ。場合によっては執務エリアを大幅に縮小して、その分コミュニケーションエリアを取ることも検討している。
一方でリモートという選択肢を手に入れ、地方でのタレントの採用、顧客も慣れてきたことは有効に使う。両方のメリットを併用していくつもりだ。
最後に
私自身、様々な方々に助けられてきた。だから7つの習慣の「相互依存」の通り、自立した個人が集まり相乗効果を発揮して大きなチャレンジを一緒に目指す、苦楽を共にする一体感のある組織を目指したくて起業した。
私はこの仲間と一緒に過ごしたいと思う。これが私の考える幸せにつながっている。