はじめに
このブログを執筆している4月17日現在、新型コロナウイルスがいつ収束するのかは、まったく見通しが立たない状況です。現在発出されている「緊急事態宣言」は5月6日までとなっていますが、それを過ぎれば昔のような生活か戻ってくるかと言えば、そうとも言い切れず、以前「新型コロナウイルスを巡る今後の状況予測と今できる対策〜プリンシプルの取組」で紹介したように、今後は「悪化期」「最悪期」「回復期」を数回繰り返す可能性もあります。そうすると、この状態が長期間、例えば半年や1年、あるいはそれ以上続く可能性も、考慮にいれなければなりません。
今の状況が長期化する中で、やるべきことや気を付けるべきことは色々あるとは思いますが、何よりも大事なのは、「自分自身の心身の健康を維持する」ことではないでしょうか。そこで今回は、新型コロナウイルスに負けない、非常時だからこそ気を付けたい健康作りのポイントを4つ、ご紹介したいと思います。
- 自分の健康を毎日チェックする
- 「非日常」にこそルーチンを大切にする
- オンとオフのメリハリをつける
- 自分の負の感情に名前を付けて向き合う
今回参考にしたサイトは以下の通りとなります。
自分の健康を毎日チェックする
ダイエットでも毎日体重計に乗ることが大事のように、健康管理(ヘルスケア)でも、自分の健康を毎日チェックして記録を付けておくことは重要です。そうすることで、健康状態に何らかの「変化」が起きた時に、それに「気付く」ことができます。そうして「気付く」ことができたのなら、「対処」することができるのです。
ヘルスチェックといっても、自分で採血したりとか、特別なことをすることはありません。項目を決めて、毎日決められた時間に、例えば朝の5分くらいで、今の自分の健康状態を振り返るだけで良いと思います。
項目としては、以下のようなものが例としてあげられます。
測定する項目
- 今日の体温
- 今日の体重
身体の状態
- 就寝時間と起床時間(23時〜5時など)
- 睡眠の質(よく眠れた、あまり眠れなかった、など)
- 食欲(普段よりある、あまり食べたくない、など)
- 疲れ具合(とても疲れている、あまり疲れていない、など)
心の状態
- その日の気分(気分が重い、特に問題ない、など)
- その他気になること
記録するのは紙のノートでもいいですし、Excelでもいいですし、スプレッドシートでも問題ないです。項目が多くなると続かなくなるので、自分にストレスのない範囲で、簡単にできる範囲の項目を決めて、それを毎日続けていき、そしてその変化に気付くことが、健康管理の第一歩となります。
「非日常」にこそルーチンを大切にする
新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるい、政府から緊急事態宣言も発出される中で、日々の生活が激変した人も多いと思います。以前は毎日電車で出勤していたのに、今は家でリモートワークすることが多くなったとか、家族とほぼ一日中同じ空間で過ごすようになったとか、外出できないので体を動かす時間が減ったとか、人によって変化は様々ですが、今までとは違った状況に困惑している方も多いと思います。そんな「非常時」の今だからこそ、「決められた何か(=ルーチン)」を決めて、それを毎日欠かさずに実施して、生活や仕事の「リズム」を維持していくことが大事であると考えます。
先ほどの「健康をチェックする」もルーチンとして挙げられると思いますが、他にも例えば、以下のようなことがルーチンとなると思います。
- 朝起きたら、窓を開けて換気をする
- 決まった時間に家族でラジオ体操(第一)をする
- 勤務開始時に、社員全員で朝会(オンラインミーティング)をする
- 勤務終了時に、日報を付け振り返りの時間を設ける
- 寝る前に実家の両親に電話をし、話をする
- 毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きる
健康を維持する上で、生活のリズムや仕事のリズムを維持し続けることは特に重要となります。状況が普段と違うからこそ、決まった何かを繰り返し実行することで、日々のリズムを一定に保つのです。
そしてそんなルーチンは、毎日無理なく、欠かさずに実行できるものであることが必要です。そのため、特別なことや無理して行う必要があることをルーチンにする必要はありません。普段していること、あるいはこれならできるということをルーチンとして、毎日欠かさずに実行していく、そしてそれによりリズムを維持し、自分の自信も築いていくことが、大事であると考えます。
オンとオフのメリハリをつける
外出自粛が呼びかけられ、一日の大半を家で過ごすようになった人も多いと思います。そうすると、例えばリモートワークで仕事をするにしても、オンとオフの境目が曖昧になりがちで、つい働きすぎてしまったりする場合もあります。またこのような時期だからこそ、何かを楽しむことに躊躇してしまう人もいるかもしれませんが、かといって一日中テレビでコロナ関連のニュースを見ていては、気が滅入ってしまうだけです。
勤務時間と趣味を楽しむ時間のメリハリ、起きている時間と、しっかり休息する時間のメリハリ、そのような「オン」と「オフ」の境界をしっかりと定めて、メリハリをつけることは、非常時の今だからこそ、重要になると考えます。
そのような意味で、先ほどのルーチンの中に、趣味に関するルーチンを入れておくことも、一つの方法であると思います。
- 毎日30分は趣味の時間にあてる
- 日中(10時から18時)はテレビを見ない
やり方は人それぞれだと思いますが、自分なりに工夫して、「オン」と「オフ」の両方の時間を、毎日の生活の中に、メリハリをつけて位置づけていくことが大事であると考えます。
自分の負の感情に名前を付けて向き合う
世界全体が「非常事態」となり、いつもとは違う生活が強いられ、いつも楽しめていたことを自粛しないといけない生活が続いていくと、どうしても自分の心の中に、様々な「負の感情」が生まれてくると思います。それは「不安」であったり「恐怖」であったり、「苛立ち」であったり「悲しみ」であったり、あるいは「怒り」であったりと、様々です。
そのような「負の感情」が芽生えてしまうことは、誰にでもあることであり、そのこと自体を気にすることはありません。ですがそんな芽生えた「負の感情」をそのままにして放置してしまうと、いつかその「負の感情」は積み重なって巨大となり、あなた自身や、あなたの大切な人を傷つける事態になってしまうかもしれません。そうならないためには、自分の心の中に芽生えた「負の感情」にしっかりと向き合って、しっかりと対処していくこと(=ストレスコーピング)が、重要となります。
そのための方法はいくつかあると思いますが、例えば自分の感情に名前を付け、正体を知るという方法があります。認知行動療法の「コラム表」などで有名な方法ですが、ごく簡単に紹介すると、以下のようなものとなります。
1.何かイヤな気分になった時、そのときの「場面」と自分の「感情(気分)」を言葉で言い表してみます
- テレビのニュースを見て、新型コロナウイルスの感染者数が日本で9,000人を超えたと知ったとき → 不安・恐怖
- 家で仕事をしていて、突然子どもが叫びだしたとき → 怒り、苛立ち
2.次に、その時感じた感情(気分)がどこから、何故生じたのか、その裏側にある考え(自動思考)、その根拠を書き出してみます
- 不安と恐怖 ← 毎日、どんどん感染者数が増えていて、止められない状況になっていて、いつかは自分や、自分の身の回りの人も感染してしまうのではないか
- 怒り、苛立ち ← 仕事に集中しているのに、なんで邪魔するのか
3.最後に、その考えや根拠に自分で反論をしてみることで、自分の負の感情を和らげ、バランスのとれた思考へと導きます
- 毎日、どんどん感染者数が増えていて、止められない状況になっていて、いつかは自分や、自分の身の回りの人も感染してしまうのではないか ← そうならないために、今みんなで外出を自粛してリモートワークをやったりしているのであり、やるべきことをやっていれば、感染のリスクはきっと抑えられるハズ
- 仕事に集中しているのに、なんで邪魔するのか ← 仕事をしている自分の姿が珍しいのかもしれない。子どもも慣れない生活で、不安なのかも知れない
以上はあくまで例ですが、何か「負の感情」に押しつぶされそうになった時、それを例えば紙などに書き出して「客観的」に見てみることは、自分の感情に対処していく上で、非常に有効な手段であると私は考えます。紙に書いてみたところで、不安や恐怖が解消される訳ではないかもしれませんが、その感情が、どういう思考や根拠に基づいているかを知ることができれば、「それが本当かどうか調べてみよう」とか「別の考え方もあるかもしれない」などと、次のアクションが生まれてくるかもしれません。
自分の中に芽生えた「負の感情」に心が押しつぶされそうな時は、自分のその感情に名前を付けて、客観的に向き合ってみることを、是非試していただければと思います。
個人の「セルフケア」を会社全体で支援する
以上、個人が自身の健康を管理する「セルフケア」において、特に重要と考えるポイントを4つ紹介してきました。一方で、個人の健康管理は「セルフケア」だけで達成されるものではなく、それを会社全体で支援していくこと(ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)も重要となります。
そのときに鍵となるのは、コミュニケーションの「量」と「質」を担保することではないかと考えます。活動が制限され自粛することが多くなった状態では、そもそものコミュニケーションの「量」が不足がちとなったり、特定の人とのコミュニケーションに偏ったりすることが多くなります。また、会社にいれば気軽に出来ていた雑談や相談も、リモートワーク環境ではそう簡単にはできなくなります。そのため会社全体としては、できるだけ意識して、そのようなコミュニケーションの機会を設けることが大事となってくると思います。
本ブログの最後に、コミュニケーションの量と質を確保するために、プリンシプルで実践していることを2つ紹介したいと思います。
社員アンケート
フルリモート下での仕事環境や、社内コミュニケーション、体調についての簡単なアンケートを実施しました。すぐには改善できないこともあるかと思いますが、社員一人ひとりの心配事に寄り添い、解決に向けて少しでも前へ進んでいくことが重要です。
リモート訪問
学校の家庭訪問ならぬオンラインでのリモート訪問です。社員一人ひとりの心身の健康状態の確認と、自身の気持ちを言葉で伝えてもらうことによる、ストレスの緩和を目的としています。
さいごに
いつ終わるのかもわからない、終わりがあるのかすらわからないこの状況においては、体調を崩しがちになったり、時には自分自身の「負の感情」に、おしつぶされてしまいそうになることもあるかと思います。でもそのような時だからこそ、家族や仲間や、会社を頼ることを、忘れないで欲しいと思います。
そしてまた同時に、困っている家族や仲間がいたら、自分にできる支援を実践することも、同じように重要であると思います。できることはほんの些細なことかもしれませんが、それでも、それによって心救われる方も、きっと多いと私は思います。
本日4月17日の時点で、世界の新型コロナウイルスの感染者は210万人を超え、死者は14万人を超えました。残念ながらこの先も、この感染症にかかって、もっと生きていたいのに生きられずに、無念の中で亡くなられていく方は、増えていくことと思われます。
一方で、新型コロナウイルスがもたらす様々な「禍(わざわい)」は、私たちの社会や経済、組織や家庭、そして個人個人にも、大きな影響を及ぼしています。感染症にかからなくても、現在大きな困難に直面し、生きていくことに辛さを感じていらっしゃる方も、多くいるのではないかと思います。
でもこんな時こそ、こんな時だからこそ、「生きる」ことを決して諦めないで欲しいと、私は心の底より、切に願います。力まず焦らず、無理せず、けれど弛まずに、自身の身体と心に向き合って、自分が出来ることを着実に実践していくことで、この困難な状況を、多くの仲間とともに乗り越え、そしていつか、心の底から笑い合える日が再びくることを、私は強く信じています。